kt-vet’s blog

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Mycoplasma bovis

 Mycoplasma bovisが属するMycoplasma科(グラム陰性)の特徴に、種特異的、人工培地で発育可能な最小真正細菌細胞壁を欠くなどいろんな特徴があります。

 真正細菌で最小であり、0.3µm程度の細菌です。赤血球が8µm、細菌が数µmであるのを考えるとかなり小さいです。光学顕微鏡でも観察は不可能です。一応ギムザ染色やビクトリアブルー・ゲンチアナバイオレット(クリスタルバイオレット)で染まると書いてあって、染めるのですが、言われたら小さいのいるかもって思いますが、見えません。

なおかつゲノムも大腸菌から比べるとかなり小さい

 故に、代謝系を一部欠いており、宿主細胞の代謝系をお借りするというちゃっかりした細菌であり、培養するときも培地に血清や酵母抽出液等結構な栄養要求性の細菌です。一般的にはPPLO培地、Hayflick培地、NK培地(関東化学の商品名)で分離、増菌を行います。血液寒天培地には生えないが通説ですが、日水さんの血液寒天培地に実は生えます(保証はしないですが、今のところ生えてこない株はいません)。血液寒天培地に生えると1㎜以下の小さな弱いβ溶血(αではありません)のコロニーを示します。この理由として、過酸化水素産生により血液が分解されていると思ってます。この時、特徴的な目玉焼き状の中心部が陥没したコロニーは見えません。BD、極東化学等の血液寒天培地には生えないのは確認しています。この会社が悪い!とかじゃないので、一般細菌はもちろん生えますのでご安心を!

さらに培養時間がまあかかる方です。初代株は3日はかかる印象です。もちろん菌量によっては5日とかかかるやつもいます。培養はカビとの戦いです。カビに何度菌を侵食され、痛い目を見たことか。。原因は手技なんだろうな、何度も起きてないか開けてしまっている等たくさんの心当たりはあります。安定して培養するのに1年かかりました!!

 

 この細菌は牛に対しては、乳房炎や気管支肺炎、関節炎、中耳炎等に関与していることが報告されています。ですが、何が悪さをしてこのようになるかはいまだに謎です。Mycoplasma mycoydesとかでは毒素があるとされています。しかし、M. bovisは過酸化水素による細胞障害もすこしはありますが多くは細胞自体は元気そうです。でも免疫が活発になることで免疫細胞とM. bovisの死骸がたくさん積もって物理的に障害や、免疫細胞の過剰な反応による自己免疫疾患のような病態になっているのが原因かなと思っています。

 

 とまあM. bovisとはこんな細菌で、とっつきにくいですが謎の多い細菌で調べることには困らなさそうな細菌です